オンライン資格確認 導入記 (No.15)                2021.9.25 更新

その後 2: “該当なし・複数該当・無効”


既存の保険証をもとにした確認をオンラインでやっていると, “該当なし・複数該当” という 回答にかなりの頻度で出くわします. ただ, 逐一問い合わせてみると, こちらの入力ミスも含めて, すべて”有効”でした。それぞれオンラインで表示されない事情がありました。


該当なし

原因1: 確認時の入力ミス

問い合わせる当方が, 生年月日, 保険者番号,被保険者・記号・番号のいずれかの入力にミスがあれば,当然そうなります。


こんな保険証を出された人がいました。かなりすり切れています。コピーさせてもらった画像がこれですが, この赤下線部分が”5”に見えたので そのように入力してオンライン資格確認をしましたら, “該当なし”でした。実は これは”3”でした。末尾の”3”とちょっと字のパターンが違うので”5”に見えたのですが...

保険証を目で読み取って, 資格確認する場合は絶えずこういう誤認の危険が伴います。


原因2 : その他の事情


事例1

近隣の自治体の国保保険証でしたが, 受診者の保険証を見て,オンライン資格確認すると,”該当なし”だったのです。そのことを自治体に問い合わすと, 「国保の手続きを済ませたあと, 保険証は即日発行されて, それをもって当院に受診されたのだと思います。オンライン資格確認に登録するのに少し時間がかかるので オンライン資格確認に間に合わなかったのでしょう。」, というのんきな返事でした。この担当者は コトの重大性が分かっていないですね。”該当なし”を真に受けたら, その受診者に「あなたの保険証は無効です」と告げなければならず, 一騒動起こるのは必定です。本来 保険者はオンライン資格確認登録を済ませてから,保険証を発行すべきなのです。認識がなさ過ぎます。そもそも自治体の担当者がオンライン資格確認のことをあまり知らない。厚生労働省の指導が甘いのでしょう。


事例2

全国健康保険協会(協会けんぽ)xx支部 : 保険加入(開始)の手続きを済ませ, 1ヶ月半後に受診された人がいました。保険証を読み取って,オンライン資格確認すると, ”該当なし”でした。支部に問い合わせると, 事情は少し複雑でした。その人は15歳で, 父親の保険に扶養者と認定されるのにいったん年金機構での”手続き・審査”が必要だそうです。そのときにマイナンバーを紐付けされずに支部に返された。(マイナンバーはカードを所持の有無にかかわらず, 日本国民すべてに付番されているのだそうです。) 本来これを保険証に付与すべきなのが, 何らかの事情で, 付与されずに支部に返されたので, 支部でそのままオンライン資格確認に登録したが, こういう保険証情報はオンライン資格確認で参照することはできない。この人がマイナンバーカードを取得されて, 保険証情報をそのカードに紐付けするという手続きをすれば, オンライン資格確認システムで参照できるようになるだろう,という回答でした。診療の合間に聞き取った内容なので, 正確でないかもしれません。保険認定に年金機構が絡んでいることは新知見でした。


事例3

ある, 陸送運輸会社の保険証ですが, 有効であるにもかかわらず, あえてオンライン資格確認に登録しないのは, 被保険者に家庭内暴力事情があって, 個人情報を公開できないのだというのです。それは厚生労働省も許可している,ということなのです。さらにマイナンバーカードを当の本人が取得しても, オンライン資格確認にUpすることはないので,  該当なし,になるでしょう, ということです。こんな人が受診されたら, 受付は混乱しますね。


事例4

全国健康保険協会(協会けんぽ)xx支部: 被保険者が勤務する事業所の社名変更などが近日中に行われる予定なので, 現在 オンライン資格確認にUpするのを保留してる。ということです。


事例5

自衛隊の一部のけんぽ, 鳥取県西部では”美保自空” はオンライン資格確認に載っていません。これは最初から”運用マニュアル”に記載されています。


事例6

文部科学省共済: 保険者に問い合わせても保険は有効なのに, なぜオンライン資格確認で該当なしとなるのかわからない, という事例もありました。こういう場合は, 保険者サイドでオンライン資格確認でどうのように表示されるのか, 確認できるといいのですが, そういうしくみになっていないといいます。


複数該当

事例1: 双子の二人が同時に受診されました。家族保険でしたので, 保険者番号, 被保険者・記号, 番号も 同じですし, 生年月日も同じです。この場合,複数該当 と表示されました。保険証をみると枝番はそれぞれ違っていました。マイナンバーカードだと, 正確に表示されるのでしょうね。


無効

無効と表示される場合は, オンライン資格確認で保険の存在が確認されて, それが現在無効である, という意味なので, ほぼ信用できるハズなのです。幾つか保険者に問い合わせても, その通りですという結果でした。 ところが, ある協会健保の被保険者で, 無効とでたので, 電話で健康保険協会に問い合わせたら,有効だというのです。オンライン資格確認で無効とでる理由がわからない, という返事でした。私は, 「そちらで, オンライン資格確認の表示がどうなっているか確かめてもらえますか, 原因をすぐに調べてもらえませんか」と食い下がったのですが, オンライン資格確認ができないので...とうやむやになってしまいました。

こういう事例があるとなると, もうオンライン資格確認は信用出来ないことになります。


それにしても, オンライン資格確認で”無効・該当なし”と表示されることによるトラブルがどれほどのものか, 保険者・厚生労働省の認識・危機感がなさ過ぎます。こんな状況を放置すれば, オンライン資格確認システムは新たなトラブルを誘発するシステムとなり,かえって有害です。レセプトの保険情報の誤りをなくすという当初の厚生労働書の宣伝を自ら否定することになるでしょう。保険証によるオンライン資格確認の整合性を高める努力を怠っては医療機関からの支持を得られないと思います。


9.24の 厚生労働省からのMail 連絡がきました。その中では 強気の方針を貫いています。

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【オンライン資格確認 本格運用開始スケジュール】

10月20日(水):本格運用の開始(医療機関・薬局での薬剤情報の閲覧開始含む)

【本格運用開始に伴う留意事項】

・保険証とシステムとで情報が異なった場合に、システム上の情報が原則正しいと判断することになります。

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今の保険者の現状では, かなり混乱が起こると思います。


厚生労働省の運用手引き書にはもっぱら“マイナンバーカードの保険証利用が普及すれば”という前提で解説されています。確かに上記のトラブルはマイナンバーカードなら発生しにくいかもしれません。しかし, 大部分の国民が保険証としてマイナンバーカードを利用するようになるのは何年先のことでしょう。


その手引き書(オンライン資格確認システム 運用マニュアル R2.11 初版) には

A. マイナンバーカードでの資格確認の結果、資格を喪失している等有効な資格が存在しない。 ときは

(1)退職等で月末に資格を喪失した患者がその翌月の初めに来院した場合等に中間サーバー等からオンライン資格確認等システムに最新の資格情報が連携されていない場合があります。

(2)患者の所有する最新の健康保険証に記載された資格情報を確認して下さい。患者が初診で、かつ健康保険証を所持していなかった場合は、患者からは10割分を受領してください。後日、保険資格を確認後、7割分を患者に返してください。

B. オンライン資格確認の照会結果について患者から異議申し立てがあったときは患者に最新の資格証類の所持有無を確認して下さい。

(1)所持している場合、券面情報を確認した上で資格確認を実施して下さい。

(2)所持していない場合、患者からは10割分を受領してください。後日、保険資格を確認後、7割分を患者に返してください。


上記の事例を考えると, オンライン資格確認で”該当なし・無効”と出ても, 強くは言えません。保険証を提示されたら, それを信用するのが最善策となりそうです。