電子カルテ情報共有 導入記

 

FHIRの疑問

(1) 文書管理責任者 と 文書作成者


サンプルソフト(route_5)でも 少し触れましたが, 診療情報提供書のオリジナルJSON

https://jpfhir.jp/fhir/clins/output/Bundle-Bundle-CLINS-Referral-NoEntry-Example-01.json.html

の11行目 "system" : "http://jpfhir.jp/fhir/clins/bundle-identifier", は この文書の ID が その直下の

"value" : "1318814790^2024^0123-Referral-203949583949" であることを示しています。

最初の 10文字は 保険医療機関番号で, このvalueは文書全体の管理的なid と考えられます。

オリジナルJSONでは この番号 (1318814790)は 紹介元,紹介先 いずれの番号とも異なります。

つまり, この診療情報提供書JSONでは 3つの 医療機関番号が 記載されているわけです。


厚生労働省の紹介先重点医療機関リスト ( https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001102730.pdf )では

1318814790” は実在の「東京大学医学部付属病院」となっています。

おそらく このサンプルJSONは東大の先生方が中心となって作成されたものと推測します。

紹介元 1319876543,紹介先 1318814790 の保険医療機関番号 は架空のものです。

サンプル内に 記載された 1318814790 の意図は "うちで作りましたよ" という message なのでしょう。


日本医療情報学会の解説書

「 診療情報提供書 HL7FHIR 記述仕様 第1.10版 日本 HL7 協会 2025年1月」の

p18 には

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4.4.4. Composition.custodian 要素

この診療情報提供書文書の作成・修正を行い、文書の管理責任を持つ機関を表す。

文書作成機関と同一の組織の場合、custodian 要素からは文書作成機関を表す OrganizationリソースのリソースIDである"urn:uuid:....." を記述することにより内部参照する。

文書作成機関とは異なる組織である場合は、文書作成機関とは別の Organization リソ ースで記述し、custodian 要素からはその Organization リソースのリソース ID である "urn:uuid: ..... " を記述することにより内部参照する。

なお、電子カルテ情報共有サービスに送信する場合には、文書作成機関と同一とすること

必須要素である。

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p 12には


という記載が あります。


診療情報提供書 サンプルJSONのなかには “custodian(管理人)”という言葉が2回出てきます。

1回目は<div>...</div>部分で, 2回目は 69 -72 行 (下記) の

      "custodian" : {

        "reference" : "urn:uuid:8a888471-9781-4fb7-b5c4-b34afcdea638",

        "type" : "Organization",

        "display" : "診療情報提供書交付責任機関Organizationリソース"


いずれも 同じ uuidになっていて (当然), これは 64 - 66 行 (下記)の “作成者”の uuid と同じです。

        "reference" : "urn:uuid:8a888471-9781-4fb7-b5c4-b34afcdea638",

        "type" : "Organization",

        "display" : "診療情報提供書作成機関Organizationリソース"



上記の「 4.4.4. Composition.custodian 要素 」の記述は ややわかりにくいですが, 文書交付責任機関は 文書作成機関と同一であってもいい, という取れます。

実際に3者が異なる場合があるのかというと, 大きな病院(文書交付責任者)があって, その分院, 附属診療所などが 有れば, そのような状況もあり得るかも知れません。

しかし 文末のほうに 「電子カルテ情報共有サービスに送信する場合には、文書作成機関と同一とすること」とありますから, FHIRでは 3者が異なることもあり得るとしても 実際の電子カルテ情報共有サービスでは やはり

文書管理責任者 = 文書作成者 = 紹介元 とすべきであろうと考えます。

しかし, この文書のなかの「東京大学医学部付属病院」1318814790” が custodian ,文書交付責任者 と解していいかどうかは判然としませんが, route_5 のサンプルソフトでは ここは文書作成機関に置換する 仕様にしています。試験環境ではエラーにはなりません。

 

(工事中)

2025.4.16 更新

No. 08