2022.10.5 更新

電子処方箋   導入記 (No.1)


はじめに


政府のデジタル化推進の旗印のもとに, 厚生労働省はオンライン資格確認, 電子処方箋のシステム整備を急いでいます。 2023. 1月には電子処方箋の検証運用を開始すると言っています。確かにこれが完成すれば医療システムはすべてデジタル化されるわけで, 医療システムの大きな転換点になると考えます。これにより審査機関での業務はぐっとはかどるでしょうし, レセプトデータをビッグデータとして利用することも容易になり, マイナンバーカードが普及すれば, 処方箋の不正使用, 処方薬剤の意図的重複取得なども防止しやすくなり透明性の高い医療制度になることと期待もできます。


最近の厚生労働省のベンダーに対するアナウンスには 焦りに近いものを感じます。

......今年度中に、なるべく多くの医療機関・薬局への導入を実現するため、電子処方箋の導入に係る「見積もり提示」を10月中には開始するようにお願いします。10.3(月)から、医療機関等向けポータルサイトにて、電子処方箋の利用申請が始まっております。今後、医療機関・薬局向けのオンライン説明会も予定しており、医療機関・薬局から電子処方箋の導入に関する相談がシステムベンダへ届くことが想定されます。その際、補助金増額の影響で、年度内での導入を希望する声が多くなることが想定されます。システムベンダにおかれましては、今年度中になるべく多くの施設へ導入できるよう、見積もり提示の準備をお願いします......

そんなに焦ってうまくゆくでしょうか。


電子処方箋のシステム, ルールは複雑です。医師が使いこなすにはかなりの時間が必要な気がします。オンライン資格確認は受付事務の問題ですが, 電子処方箋は医師の診療業務に深く関わってくるので, 医師のストレスは相当なものだと推測します。さらにオンライン資格確認のVPN通信が支障なく稼働することが大前提ですが, この通信が止まったときは遅滞なく以前の紙のシステムにもどして診療を止めないことが求められます。ときどきニュースでみる, 銀行のオンラインシステム, 携帯電話システム, 航空機, JR予約システムなど大がかりな故障は国民生活に多大なる影響を及ぼしますが, オンライン資格確認,電子処方箋システムも故障すれば日本の医療を巻き込む災害となることが容易に予想されます。


小さな医療機関にとって, そのシステムを管理するストレスは予想以上に大きいと思います。いま診療所には, 電子カルテのみならず, オンライン資格確認, オンライン請求のIPv6-VPN, 大きな医療機関との連携に使うIPv4-VPN, 病院への紹介に使うIPv4-VPN, クレジットカードのVPN, 一般のインターネット通信, など, 診療所はコンピュータの要塞と化しています。これらが不定期にトラブルを起こします。これからは情報通信の知識に長けたスタッフを配置することが必須になることでしょう。


医療者が電子処方箋の知識をすべて熟知する必要は無いのですが, 原理を知ることは必要でしょう。ここではその情報を皆さんと共有したいと思います。また, 自力で医療ソフトを作成しようという有志の者にとって, その存在が徐々に無視されつつあるように感じます。このサイトが助け合いの一助になることを願っています。ただ, 電子処方箋に関してはまだまだ 未定の部分, 情報提供不十分なところが多々あり, 今後 修正しなければならないところも多くでてくるものと思います。

電子カルテ, レセプト作成ソフトを提供しているベンダーが 短い期間で電子処方箋の機能を組み込んで医療機関に提供するのはかなりの労力を要することだと想像します。電子署名のソフト(後述)も外部から購入して実装するとなると,かなりのコストアップになるんでしょう。厚生労働省の推進する医療の電子化は医療機関にとって本当にハイコストな施策だと感じます。


ご意見・ご感想がございましたら以下のメールアドレスにお便りください。




電子処方箋の概略


電子処方箋の仕組みは

  1. 1.電子カルテで処方内容CSVを作成

  2. 2.そのをもとに電子処方箋XMLを作成

  3. 3.確定前電子処方箋XMLを 管理サーバーに送信し, そこで重複, 併用禁忌の情報を得る

  4. 4.確定電子処方箋XM作成を作成して

  5. 5.電子署名を付加してサーバーに送信, 受診者には引換番号と処方箋内容が印刷された紙を渡す。

(紙の処方箋の場合は電子署名は不要)

  1. 6.あとで薬局で確定した処方を閲覧できる