Filemakerでレセコンと電子カルテを自作しよう

 

Filemakerで

レセコンが

作れますか ?

データベースソフトの定番と言えば, SQL, Windowsの Accessになるのでしょうか。 ネットのQ&Aで「Filemaker (ファイルメーカー) でレセコンが作れますか?」という質問に対して,  「....の機能がないので無理です。」という問答が載っています。また2チャンネルの掲示板には「Filemakerなんてクソだ....」というようなひどいコメントにも多々出くわします。Filemakerの実力はまだまだ認知されていないのだな,とあらためて感じます。たしかに Filemakerは市場にでた当初はカード型データベースソフトであり, 貧弱なデータベースソフトでだったものと思います(使ったことはないのですが)。FilemakerはVersion 3にして始めてリレーショナルデータベース機能を持つに至り, 使えるデータベースソフトの仲間入りを果たしました。現在のFilemakerは Windows, Macの機種を選ばず,  Scriptも平易な日本語で記述しやすく, 初心者にも取っつきやすいデータベースソフトです。さらに Filemaker サーバーソフトを使えば250台まで LAN接続できて, ビジネスにも使えるようになりました。レセプト作成は, 保険ルールそのもが複雑で, 例外が多く, システム構築に時間と労力がかかりますが, “自作する”というのことは何にも勝る楽しみです。バグとか, いろいろな不具合を修正し, 改定のたびにScriptを変更することは, パズルを解くような楽しみを感じます。


FMbat ....て

むかしむかし...

約20年前, 診療所を開業する準備をしていると, 医療機器業者がレセコンメーカーの担当者を連れてきました。とりあえず普通のレセコンを導入するつもりでいたのですが, いろいろ話を聞いてみると, 途中で他のメーカーのレセコンに鞍替えしたいときに, レコードの乗り換えがまったくできない, 患者データのExportができない仕組みになっていることがわかりました。初心者とは言え, データベースソフトをかじったことのある身には, 我が耳を疑う話でした。当時レセコンと言えば, 日本電気, 東芝, 富士通, サンヨー, などが大手でしたが, 例外なく同じ仕様だということでした。要はユーザーを囲い込んで離さない仕組みになっていたのです。今でこそ, 日本医師会のSQLで作成されたORCAが発表されて, レセコンデータのInport, Exportが簡単にできることが医師会員にも分かって, 大手のレセコンも徐々にOpenな構造に変化しつつあるように聞いています。

4th Dimension

私が開業した当初は, 大手のレセコンはそんな状態でしたから, いろいろインターネットで探して”アーチャンレセプト”という4th Dimensionというデータベースソフトで作成された商用レセコンを導入することにしました。これは当然, データのInport, Exportができる仕様でした。開業して, 患者基本データ, 病名などを取り出して新たに4th-Dimensionで自分のデータベースを作ろうとしたのですが, これが 素人の私にはなかなか難しい作業でした。参考書も購入して取り組んだのですのが, うまくゆきませんでした。そこで v2の時から使っていた, Filemakerで作ることにしました。運良くFilemakerは v3になって relational databaseの機能を実装して大幅な機能拡張を果たしました。この機能がなければ, レセコンは作れなかったと思います。

レセコン自作

ところが, ”アーチャンレセプト”からはき出された患者データを逐一, downloadしてFilemakerに取り込む作業をしているうちに, いっそのことレセコン自体をFilemakerでできないものか?, という考えが徐々に頭をもたげて来ました。そこで一念発起, レセコン作りを始めて, 3年かかってやっと実用になる程度のソフトができあがりました。さらに運良く, このころ当時の厚生省が医療情報のデジタル化を推奨する方針を打ち出して, 診療行為, 薬剤, 病名, 等の(数字の)マスターを無料でネット公開するようになったのです。レセコン工業界ではそれ以前からそれらのマスターと称するものを自家作成し,数十万円で会員レセコンメーカーに販売していたらしいのですが, 厚生省版は無料公開されたのです。これは随分助かりました。そして平成12年(頃)県医師会主催でレセコン業界の代表と診療報酬支払基金の職員を招いて, レセプトの電子化をテーマとした研究会が開催されました。私は不完全ながら, Filamakerで作成したレセコンを発表しました。そのとき, レセコン業界の方のお偉いさんから 「レセコン作りは非常に難しい。我々はすべての診療科で使えるレセコンを作っている。先生のレセコンは自分の科だけで使えるアクロバットのようなレセコンだ」という褒め殺し的コメントをいただきました。これはいい名前だと思って, 私のレセコンに”FMacrobat”と命名しました。それでも長いので, 後に”FMbat”に変更しました。Filemaker v4 (2001年) から実際に使い始めました。


FileMaker 選手権2014

FMbatの公開の準備を進めていましたが, 期限のない仕事ですから, ついサボってしまいます。約2ヶ月前に何かの折に”マイナビニュースでは2014年8月27日(水)~11月3日(月・祝)にて「FileMaker選手権2014」を開催します。”のイベントを知りました。

ちょうど励みになるから, と思い, これに応募すべく, 1日の診療以外の時間をほとんど, FMbat公開の準備に費やして11/1にNetで応募を完了しました。いままで v6まで使ってきた relation key をやめて, マルチFieldsのrelationにあらため(これは今年の3月ころから手がけていたことですが), 自院に特化した部分をそぎ落として, v13に適合させ, iPadのレイアウトを追加して…と,ここ3週間くらいは 数十時間を費やして, それでもやっと皆さんにお見せできる形になってきました。relationの数が多いので, relation key(我流の呼び方ですが)の変更はかなり大変でした, ちょっと変更するだけでその影響は広範囲に及びます。また, v13への変換は, v6  -> v7への変換より格段に手間いらずでしたが, 微妙な修正が必要でした。iPadレイアウト追加は, “追加した”, というくらいで, iPadの手軽さは生かし切れませんでした。機能は多岐にわたっていますので, つつけばいくらでも改良の余地がありそうで, きりなし作業です。ただ, このFMbatは皆さんの自作電子カルテ+レセコンのご参考になればいいので, 完璧なソフトにする必要はないのかな, と思っています。選手権の結果はどうなるでしょう。(^.^)














結果は見事落選でした。ちょっとがっかりでしたが, 内容が複雑な上に, タスク自体が専門的で, 一般のひとには, 善し悪しが判断しにくい内容だと思います。さらに, 見栄えもいいわけでもなく,v13の斬新な機能を使っているわけでもなく, 審査員にはアピールするものがなかったのだろうと思っています。(=_=;)


電子カルテ+レセコン自作について考えること

約15年間, レセコンソフト作りに手を染めて感じるのは, なんでこんなに保険請求の規則(記載規則)が複雑なのだろう, ということです。診療項目を1項目づつ施行した回数だけ羅列して記載する, という原則で統一されれば, 作業は単純になって自作がやりやすくなります。百歩譲って, 同じような項目をまとめて 回数を記載する,としてもそれほど難しくないでしょう(それでも手間がかかりますが)。ところが, 随所に現れる”加算”がくせ者です。この項目の点数は定数ではないのです。一例を挙げれば, 時間外(休日, 深夜)処置加算....これは時間外診療のときに処置の診療点数を40〜80%かさ上げする処理です。また, 2以上の手術の50%併施加算...これは1回の手術時に2種類の手技を行ったときに2個目の手技は50%減額の点数にする, というものです。Filemakerの処理からすると(私のやり方では)いずれも, 前のレコードに戻って, その点数を記憶して,さらに戻って現在の点数を変更する, というやり方をとらねばなりません。 さらには, 平成24年から実施された, 診療行為ごとに, その実施日と回数を, 単純に数字を記載のではなく“,,,,,,2,,,,,,,,,,”のように記載する規則, これはFilemakerにとってはそれこそacrobatのような処理を要求されます。また熱傷の治療開始日を過去にさかのぼって診療項目に記載する, このような処理を自動でこなすにはそれなりに複雑なScriptを組まねばなりません。厚生労働省は, あえて保険診療記載ルールを複雑にして, 素人のレセコン自作を阻止しようとしているかのようです。最終的な電子レセプト自体は plain text形式なので, 厚生労働省のとってそれを2次利用する, という最終形態され整備されればそれでいい, という考えでなのでしょうか? そこには, レセプトを提出する側の苦労はまったく考えられていない, と感じます。昔は手書きが基本でしたから, それほどの作業ではないと考えられていたのでしょうが, 平成18年から始まった電子レセプト開始に際して, 思い切って単純な記載に変更していたら, “レセコン”などというものに年間何十万円も支出する必要はなくなったことでしょう。恐れるのは, この保険ルールが益々複雑になって, 個人参入が出来なくなって, 結局昔のレセコン業界が支配した時代に逆戻りするのではないか, ということです


保険のルール, 記載方法は, 改定のたびに猫の目のように大きく変わります。前もって, 保険の計算構造が分かっておれば, それなりに順序立てて, Field定義とか, 計算式を設定するのですが, 将来の予測が困難なために 毎回 場当たり的な, 計算式を追加, 変更で切り抜けることになります。また, Filemaker自体も, 毎年のようにVersion upされることが(機能がアップするのは歓迎ですが), 事情をさらに複雑化させます。v6 → v7の変更では,基礎となるフォーマットが変更になったため, すべてのFileの更新を余儀なくされましたが, フォーマットだけでなく, Filemakerの使用規則も大きく変更されて, まったく異なるソフトに成ったような変更でしたので, それに追随するのはかなりの時間と労力が必要でした。いまでも, とくにScript記述では v6までの様式を部分的に残したまま, レセコン+電子カルテを運用しています。ただし, 最近の v11 → v12のフォーマット変更は ほとんど問題は生じませんでした。Filemaker自体も円熟してきたのかな, と思っています。